就活中に皆さんも一度はお世話になったことがあるかもしれない大学のキャリア支援センター。そこで働く職員さんたちも、かつては皆さんと同じ就活生でした。
今回は新卒で入ったゲーム会社を経て、現在は千葉商科大学のキャリア支援センターで働かれている衛藤様に、ご自身のキャリアの歩みやキャリア支援センターの職員として今の就活のあり方に感じられていること、就活生の皆さんに向けたメッセージなどを伺いました。
日々変化する就活を取り巻く環境 キャリア支援センターが目指す姿とは
キャリア支援センターのお仕事について教えて下さい

キャリア支援センターの仕事は学生向けと企業様向けの二軸があります。まず学生向けには就活ガイダンスの実施が挙げられます。就活のスケジュールについて解説したり、書類選考や面接対策といった対策をお手伝いしています。
ノウハウの提供だけではなく、企業様と交流する機会を作るのも我々の仕事で、学内で開催される合同企業説明会といったイベントを複数実施しています。
これらの取り組みによって学生がスムーズに就活対策を進められるようにしたり、企業様とのご縁までつなげていくというのが学生向けの仕事内容となります。
企業様向けの軸で言うと、情報交換を通じて得た企業様の求人を学生に発信したり、逆に我々が企業様に本学の学生の特徴や魅力を発信して関係を構築していくという仕事があります。
その中でも衛藤様がご担当されているのはどのような業務になりますか?
去年までは一年生から三年生向けのガイダンスやイベントを担当していました。今年からは四年生対象のイベントと企業様向けの対応を担当しています。
どのようなときに仕事のやりがいを感じられますか?
すごくシンプルなんですが、学生の進路選択に携わる仕事ですので大学卒業後の進路決定に自分が関われたんだなと感じる瞬間にはやりがいを感じます。また、低学年から就活を頑張る姿を見てきた学生が、実際に内定を獲得した姿を見るとキャリア支援センターとしてサポートしてきてよかったなと強いやりがいを感じます。
日々の業務の中で難しいと感じることはありますか?
変化が激しい就活市場への対応には苦戦しています。年々企業の選考スケジュールが早期化していることにより、大学生活の半分近くの期間にわたって就活を意識した時間の使い方をしなくてはいけなくなっているのは学生たちにとって大変なことだと感じていますし、そんな学生たちに対するベストな就職支援を模索するのは難しいです。
加えて、生成AIの活用が活発になっていることも大きなトピックとして挙げられます。生成AIを活用して書類作成や面接対策を進める学生は増加傾向です。便利な一方、使い方を誤ると自分らしさが企業の方に伝わらずかえって逆効果になることもありますので、効果的な活用方法に関する学生への発信についてははまだ手探りです。
また、進路選択というのは正解がないというのが大きな特徴だと思っています。学生が満足できる進路を選んでもらうのが一番大切なことだと思うので、一概に大手企業に入れば幸せになれるというわけでもないですし、本当に一人一人の考え方が違う中でそれに寄り添っていくのは難しいポイントだなと感じます。
本質的な満足度を求めていくとなると効果測定も難しそうですね
おっしゃる通りです。これまで大きな指標とされてきた就職率というのはどの大学も95%程度ありますし、その数字ばかり追いかけていても意味がないと思っています。代わりとなる効果的な指標を新たに作るということも必要だと思っていて、それこそ満足度もそうですし、大学での学びや活動とマッチした進路実現について何か基準を作れたらという点は今模索しています。
キャリアチェンジを経て大学職員へ 新卒で入った会社で気づいたやりがいを感じられること
ご自身の就職活動はどのようなものでしたか?
今思うとよくない動きをしてしまっていたなと思います。当時は人を楽しませる仕事がしたいとか、何か面白いものに携わりたいという考えでエンタメ業界の企業ばかりを受けていました。自己分析が不足していて、自分は何が得意で何が苦手かといったことを掘り下げずに、単純に楽しそうという気持ちだけで動いてしまっていたので、業界の幅も広げることができなかったなと感じます。
新卒ではどのような会社でどんな仕事に従事されていたんですか?
新卒では運良くゲーム会社から内定をいただいて、営業職として働いていました。もちろん扱っているゲームという商品は好きだったんですが、自分が物を売りにいくということに自信を持てなかったと言いますか、自分の得意なことを活かせているといった実感は正直得にくいなと思っていました。
そんな思いを抱えていたときに、業務の一環でインターンシップ生の受け入れを担当したんです。そのインターンシップはワンデーの短いものでしたが、その後入ってきた新入社員の研修などにも関わる機会が増えてそれにすごくやりがいを感じたんです。
自分は何かを売りにいくといった仕事よりも、人の背中を押したりサポートしたりという仕事が向いているのかなと思い始めたことで新しいキャリアについて考えるようになり、その中で大学職員という選択肢も出てきました。
中途で大学職員になる方は他の業界出身の方も多いんですか?
おっしゃる通りです。大学職員に転職する方は大学職員としていろいろな大学を渡り歩いている方が多いのではないかというイメージがあったんですが、入ってみると本当にいろいろな業界から人が集まっています。私の周りでも広告業界や電機メーカー、運輸業界といった形でさまざまなルーツを持つ方がいて面白いです。
就活生の頃の自分にかけたい言葉はありますか?
“本当に自己分析が大切だよ”と伝えたいです。就活と聞くとどうしても内定を取るために面接の練習をすることや、エントリーシートに書く内容を必死に作るといったことを思い浮かべる方も多いのですが、ゴールは内定を獲得することではなくて内定をとったあとに自分が後悔なく楽しく働けることだと思います。どういった環境なら自分が楽しく働けるんだろうなということを考える時間を惜しまないようにしてほしいです。
逆にそういったことをしっかりできていると、面接でも言いたいことがまとまってくるようになると思いますし、自己分析で自分の本心を整理することで面接官にも説得力のある話ができると思うので自己分析が大事だと思っています。
ありのままの頑張りが就活にも活かせる仕組みを実現したい 就活生へのメッセージと今後の展望
今の就活生は早期化などの外部要因によって自己分析が難しくなっているとも思うのですが、キャリア支援センターの職員としてどのように感じられていますか?

学内の就活イベントの様子
おっしゃる通りで、一・二年生の頃は授業やアルバイトで忙しくて、三年生になるとインターンシップに行き始めないといけないということで時間的には難しくなっていると思います。なので、がっつり自己分析の時間を何週間とか何ヶ月という単位で取るのではなくて、日々の学生生活の中で得意かもしれないと思ったことや、自分がやっていて苦じゃないこと、逆にこれだけはどうしても苦手だったということなどを何かに蓄積していくのがよいのではないでしょうか。日々の気づきをスマホのメモに入れておいて、適宜これまでの自分の経験や感じたことを振り返る機会を設けたりして自分の気づきを整理していけば、それが自己分析につながっていくのではないかと思います。
今の学生が一番不安に感じていることは何だと思いますか?
自分のやりたいことがなかなか見つからないまま就活をしないといけないことに対する不安と、企業に入ったあと楽しく働けるのかといった働くことへの不安、この二つが大きいような気がしています。
そういった不安を抱えられている学生に対するアドバイスはありますか?
入社後の環境は、どうしても入社しなければ分からない部分もあると思います。ですが、インターンシップや会社説明会への参加、OB訪問等で集められる情報を集め切ったうえで入社すれば、仮に思っていた環境と違っていたとしても、”情報を集められるだけ集めて入社したんだから頑張ろう”と割り切ることもできるかもしれません。それでも合わないと感じたら次のステップに進むのもいいと思うというメッセージを伝えています。
学生のうちにやっておいた方がいいと思うことはありますか?
就活に向けてだけではなくその後の社会人生活にも必要なこととして、人と関わる機会を増やすことは大切だと思っています。すごくシンプルなことですが、人に対して自分の意見を伝えるとか議論をするとか、自分とは違う意見を聞いたうえで自分の考えを改めて整理するとか。こうしたコミュニケーションをとる力は社会に出たときにも本当に必要で、社会に出て初めてそれをする人と大学時代からやっていた人とはだいぶ仕事に差がつくということを感じているので、そこは大学時代からやっておいてほしいと思います。無理に友達を何百人も作ろうということではなく、まずは自分が興味のある世界や領域でいいので、少しでも人との関わりを増やすというのが大事だと思います。
ご自身の経験を振り返ってみて大学時代にやっていたことが今に活きていると思うことはありますか?
大学時代に所属していたアウトドアサークルでイベントを企画したり、そのイベントに参加してもらえるような工夫を考えたりということをやっていて、その経験は前職でも役に立ちましたし、現在のキャリア支援センターの仕事でも役に立っていると感じます。
アルバイトでもただ自分のシフトの時間をこなすだけではなくて、もう少し良くするためにはどうしたらいいんだろうということを考えながら働いていたことが仕事に活きていると思います。
これから大学職員として挑戦していきたいことについて教えて下さい
今の就活のあり方はどうしても就活のタイミングになった途端に自分を取り繕わないといけない側面があると思っています。自分の素を出せないままにエントリーシートでたくさん落とされるといったことが起きるのはすごくもったいないと思うので、一人の職員としてできることは限られていると思いますが、大学生の皆さんが自分の素を出して大学時代に自分がやってきたことをそのまま企業にアピールできるような仕掛けを作れたらいいなと思っています。
より大きな枠組みで、十年後、二十年後のキャリアを考えたときの目標としては、組織をマネジメントするということにもチャレンジしていきたいです。今は自分の担当業務をしている時間が多いんですが、やはり将来的には部下を育成したり、組織をマネジメントして組織全体をよりいい方向に動かしていけるような社会人になれたらいいなと思っています。