採用面接の際に「フェルミ推定」の課題を出されることが多くなりました。
一見すると難しい課題のようにも思えますが、解答を導き出すためのポイントや対策があります。
この記事では、フェルミ推定に関する基礎知識や出題例・解法について、詳しく解説します。

フェルミ推定とは
フェルミ推定とは、具体的な情報やデータが揃っていない状況において、大まかな推計値を求める特殊な思考方法です。思考プロセスや問題解決力を評価するために、企業の採用面接で出題されることが増えました。
このフェルミとは、20世紀に活躍したイタリアの物理学者エンリコ・フェルミに由来します。彼はデータが不足した中でも直感と基本的な知識を組み合わせ、限りなく正確に推定を導き出して、原子力の研究に多大な進歩をもたらしました。
こうした手法は、さまざまなビジネスシーンでも有効であると考えられています。そのため近年、面接に採り入れる企業が増えているのです。
フェルミ推定を採用試験で出題する企業
フェルミ推定は限られた情報から仮説を立て、数値を分解しながら論理的に結論へ導く力を測る手法です。
思考プロセスや課題解決力を重視する企業の採用試験で多く活用されています。正確な答えよりも、前提の置き方や説明の一貫性が評価対象となる点が特徴です。
とくにコンサルティングファームでは、クライアントの課題を定量的に整理する力が求められるため、フェルミ推定が適した選考方法とされています。銀行や総合商社でも、市場規模の把握や事業判断に必要な数値感覚を確認する目的で出題されるケースもあります。
【フェルミ推定を採用試験で出題する主な企業例】
- マッキンゼー・アンド・カンパニー
- ボストン コンサルティング グループ
- ベイン・アンド・カンパニー
- 三菱UFJ銀行
- 三井住友銀行
- 三菱商事
- 伊藤忠商事
丸暗記するとよいフェルミ推定の基礎知識
フェルミ推定の課題を解くには、ある程度の基礎知識が必要です。次の内容を、ぜひ丸暗記してください。
日本のデータ(世界のデータ)
| 人口:約1億2,000万人(世界人口:約80億人) 世帯数:約5,500万世帯 国土面積:約40万平方キロメートル 平均寿命:85歳 労働力人口:約7,000万人 1年に生まれる子供の数:約80万人 大学進学率:約50% 大企業の数:約1万社 中企業の数:約400万社 GDP:500兆円 平均年収:約400万円 |
丸暗記といっても、厳密な数値を記憶する必要はありません。大まかな数値や規模を頭に入れておきましょう。
上記のほかにも、専門領域によって知っておきたい知識はありますが、基本的にはその場での柔軟な切り口や身近な内容から考察するのがおすすめです。
日頃からさまざまな方面に好奇心を持ち、情報を収集・蓄積するよう習慣づけておくことが、フェルミ推定に活かされるでしょう。
フェルミ推定のやり方
フェルミ推定はきちんと順序立てることで、より再現性を高められます。フェルミ推定の進め方は以下の通りです。
- 前提条件の確認
- アプローチの方針決定
- 構造化
- 数値計算
- 評価
それぞれの過程において、どのような方法で進めていくのか、フェルミ推定のやり方について解説します。
前提条件の確認
フェルミ推定では最初に問題文を丁寧に読み、前提条件を正確に確認する工程が重要です。
推定対象が何を指しているのかを明確にし、人数なのか金額なのか、期間や地域はどこまで含むのかを整理します。数える範囲を曖昧にしたまま計算を進めると、論理展開が成り立たなくなるため注意しましょう。
前提条件には人口、利用頻度、平均値などが含まれ、置き方によって推論結果は大きく変化します。誤った前提を設定すると、計算が正しくても結論が現実とかけ離れてしまう恐れがあります。
推定の再現性を高めるためには、前提をひとつずつ言語化し、相手に説明できる状態に整えましょう。
アプローチの方針決定
前提条件を整理したあとに推定へ向かうアプローチの方針を定めます。
最初に、全体を分解して積み上げる方法か、平均値を基準に掛け合わせる方法かを選択しましょう。どの指標を軸に数えるか明確にすると、計算過程に一貫性が生まれます。
たとえば「国内のカフェ利用者数」を算出する際は、人口を基準にして年代別の利用割合や来店頻度を掛け合わせて考える方法が挙げられるでしょう。別の視点として、店舗数と一店舗あたりの来客数から算出する方法もあります。
目的に合った切り口を選ぶと、論理が整理され、説明しやすい推定につながります。
構造化
フェルミ推定では、アプローチの方針を定めたうえで、考え方を数式レベルまで落とし込んで構造化することがポイントです。
対象となる数値をひとつで求めようとせず、要素ごとに分解し、掛け算や足し算で表現できる形に整理しましょう。たとえば「日本国内の自動販売機の売上」を推定する場合、自動販売機の台数、一台あたりの平均購入回数、平均単価に分けて考えます。さらに台数を地域別や設置場所別に分解すると、計算の根拠が明確になります。
構造化を丁寧に行うことで、推定結果の妥当性を説明しやすくなり、論理的な思考力を示せるでしょう。
数値計算
数値計算では、アプローチの方針決定や構造化によって導いた式に、具体的な数値を当てはめて推定を行います。フェルミ推定は正確な答えを出すことを目的としておらず、論理的に妥当な規模感を示す姿勢が重視されます。
一方で、直感だけに頼った数値設定では、現実とかけ離れた結果になりかねません。たとえば日本のカフェ市場規模を考える場合、店舗数や一店舗あたりの来客数、平均的な客単価を分解して設定します。
日常感覚と照らし合わせながら計算過程を説明できれば、思考の整合性も伝わりやすくなります。
評価
推定によって数値を算出したあとは、結果が現実的かどうかを確認しましょう。
計算過程が論理的に組み立てられていた場合でも、最終的に導いた数字が実態とかけ離れていれば、前提や仮定に無理が含まれている可能性もゼロではありません。一般常識として知られている規模感や、公表されている統計データと照らし合わせることで、数値の妥当性を検証できます。加えて、自身の生活感覚と比較し、違和感が生じないかを考えることも重要です。
評価の工程を丁寧に行うことで、推定全体の説得力が高まり、思考の精度も向上します。
【初級~中級編】フェルミ推定の例題
ここからはフェルミ推定の例題をご紹介します。
フェルミ推定は慣れないうちは難しく、取っつきにくいように思えますが、訓練を重ねればスムーズに解けるようになります。
まずは初級から中級編の問題に取り組み、基礎を押さえましょう。
日本にいる大学生の人数
このような例題の場合は、次のような流れで解きましょう。
解答例
| 1年に生まれる子供の数:約80万人 大学進学率:約50% 4学年 80万人× 50% × 4学年 = 160万人 |
ここでは「1年に生まれる子供の数」と「大学進学率」という2つの基礎知識を活用します。1~3の要素をもとに、出した答えが160万人です。
これが実際の統計と一致するかどうかは、さほど重要ではありません。基礎知識が活かされているか、また、回答のプロセスに矛盾がないかが問われます。
押さえておきたいのは「何を問われているか」という問題の把握です。この例題では「大学生の数」とあるため、短大生や大学院生などの数はあえて省いて考えています。
日本の年間テレビ販売台数
解答例
| 世帯数:5,500万世帯 テレビの平均使用年数を5年と仮定5,500万 ÷ 5 = 1100万台 テレビ離れでテレビを持たない世帯を半分と仮定550万台 |
この問題を解くには、基礎知識に加え、仮定による数値を用いる必要があります。
まず「日本の世帯数は5,500万世帯」という基礎知識がベースになります。続いて「テレビの平均使用年数」と「テレビを持たない世帯の割合」を推測し、計算を進めました。
ここでの「5年」「半分」という仮定は、回答者によって異なると考えられますが、問題ありません。正確な情報がない中でも、推測して答えを求めることが重要です。
1日あたりのコーヒー国内消費量
解答例
| 日本の人口:約1億2,000万人1日にコーヒーを飲む人の割合:大人を中心に消費されるため、人口の50%が飲むと仮定1億2,000万人 × 50% = 6,000万人 1人が1日あたりに飲むコーヒーの量:1杯が約150mlと仮定(家庭用のコーヒーカップの平均的な容量)消費されるコーヒーの回数:1日1.5杯飲むと仮定 1日のコーヒー消費量:6,000万人 × 0.15リットル × 1.5杯 = 1,350万リットル |
ここでの前提条件は、日本の人口が約1億2,000万人であるということです。それに続く2~4は、仮定をもとに計算を進めています。この仮定が現実的な数字であれば、出した答えも現実のものに近くなるでしょう。合理的な仮定ができるかどうかが、問題を解く鍵となります。
【中級~上級編】フェルミ推定の例題・過去問
続いては、中級から上級の例題をご紹介しましょう。実際に企業の採用面接で出題された、フェルミ推定の過去問です。答えを出すまでのプロセスが複雑になりますが、順序立てて考えれば解けるでしょう。
日本のキャッシュレス決済額|ベインアンドカンパニー
解答例
| GDP:500兆円キャッシュレス決済を現金以外の決済方法(クレジットカード・コード・NFCなど)と仮定キャッシュレス決済の普及率を人口全体の50%と仮定キャッシュレス決済の利用対象を娯楽と仮定(個人支出の30%とする) 500兆円 × 50% × 30% = 75兆円 |
この問題は不足したデータを仮定で補う部分が多く、答えを出すプロセスも人によって異なるでしょう。
前提条件は「GDPが500兆円であること」で、上記2~4は知識や経験に基づいた仮定です。この仮定に根拠があり、答えを出すプロセスが論理的に説明できれば、出した答えが多少現実と異なっていたとしても問題ないと考えられます。
日本の年間結婚件数|ボストンコンサルティンググループ
解答例
| 日本の人口:約1億2,000万人結婚適齢期を20~40歳と仮定し、人口の約30%(30歳分/平均寿命80歳)とする1億2,000万人 × 30% = 3,600万人 毎年この1/20(平均結婚年齢を30歳と仮定)が結婚すると仮定3,600万人 ÷ 20 = 180万人 カップル数を求めるため2で割る180万人 ÷ 2 = 90万組 再婚や離婚後の再婚を考慮し、10%程度増加すると仮定90万人 × 1.1 = 99万組 |
この問題では前提条件をまとめるために、より踏み込んだ推測が必要とされます。
ここで用いる基礎知識は「日本の人口」で、前提条件として、結婚適齢期とその年齢層に該当する人口、再婚の割合などを推測しました。
情報が揃わない中でこの部分を正確に言い当てるのは困難でしょう。しかし、フェルミ推定においては、条件を簡略化して仮定することで答えを導き出します。
トイレットペーパーの国内市場規模|モニターグループ
解答例
| 日本の人口は約1億2,000万人 1人あたりの半月の使用量平均1.5個と仮定 1年間の使用量1億2,000万人 × 1.5個 × 2 × 12か月 × = 43億2,000万個 1個の平均価格40円と仮定(12個で500円程度のセット売り) 年間市場規模 43億2,000万個 × 40円 ≒ 1728億円 |
この問題では前提条件として、1人が半月に使用するトイレットペーパーの量を、経験をもとに仮定しました。さらに、トイレットペーパー1個あたりの平均価格を推測し、計算を進めています。
ここでのポイントは使用量の仮定ですが、常識的な数値を出していれば、最終的に出された解答が現実と大きく乖離することはないでしょう。
フェルミ推定が難しいと感じる人必見!押さえるべき3つのコツ
丁寧に進めてもやはり難しくて、フェルミ推定がうまくできない場合は、以下のコツを押さえてみましょう。
- 常識や基礎知識に基づいた数値を用いる
- よく使われるアプローチや因数分解のパターンを覚える
- 各ステップの時間配分を決めて練習を重ねる
それぞれのポイントについて解説します。
常識や基礎知識に基づいた数値を用いる
フェルミ推定では厳密な数値を導き出す必要はありませんが、現実から大きく離れた解答では説得力を欠いてしまいます。
そのため、計算過程で用いる数値は日常生活の常識や基本的な知識を基に選定し、誰もが納得する根拠を添えましょう。
たとえば人口や利用頻度などは、多くの人が共有できる常識的な範囲で仮定すると理解されやすくなります。誰もが納得しやすい根拠を持つ数値を使うことで、推定結果に現実味が生まれます。
よく使われるアプローチや因数分解のパターンを覚える
フェルミ推定で良く使われる分解パターンは、以下のとおりです。
- 売上=客数×客単価
- 利益=売上-コスト
- 所有数=対象者数×平均所有数
分解パターンを事前に押さえれば、ゼロから構築するよりも時間を大幅に節約できます。
たとえば東京のタクシー台数を推定する場合、人口を基に乗車頻度と掛け合わせる型を選びます。カフェ売上なら客数と単価に分けて平日・休日で細分化してみましょう。こうした方針を複数ストックしておけば、柔軟に対応できます。
各ステップの時間配分を決めて練習を重ねる
フェルミ推定の解答時間は通常5~10分程度に設定されます。
現実的な結論を導き、論理を明確に伝えるには、各工程に時間を割り振って模擬演習を重ねることが不可欠です。問題把握に1分、要素分解に2分、数値代入と計算に3分、検証に1分と目安を立てるとよいでしょう。
練習ではタイマーを活用し、時間オーバーを繰り返さないよう調整しましょう。最初は計算に手間取るため、暗算の精度を高めるドリルも並行してください。面接本番で焦らず進められるよう、10問以上を5分切りで解く習慣を身につけます。
繰り返し練習を重ねることで、自然な時間感覚が養われます。
フェルミ推定で面接官・採用担当者が見ているポイント
採用面接におけるフェルミ推定の課題では、いわゆる「地頭がよい人」を見極めようとしていると考えられます。
では、実際にどのような能力を見ているのか、面接官や採用担当者が評価しているポイントを解説しましょう。
抽象的な問題を分解して具体化する能力
フェルミ推定では、抽象的な問題を具体的な要素に分解し、大まかな数値として把握する能力が試されます。この能力により、直面している問題を俯瞰して全体像を捉え、解答を論理的に求められます。
こうしたスキルは、ビジネスシーンで起こる予測困難な問題を解決するのに役立つでしょう。
時間制約の中で柔軟に判断する能力
フェルミ推定の課題では、限られた時間の中で柔軟に判断できる能力も、評価の対象となります。
実務の現場においては、正確であることはもちろん、迅速に対応できることも重要です。こうしたスキルは、ビジネスシーンに限らず生活のさまざまな場面で活かされるでしょう。フェルミ推定の訓練を重ね、スキルを磨いておくようおすすめします。
複雑で曖昧な内容を対応・説明する能力
フェルミ推定の課題が出る際は、解いたあとに説明する時間を設けるケースがほとんどです。ここでは、複雑で曖昧な内容を分かりやすく伝える、プレゼンテーションのスキルも試されます。
「課題の全体像をどのように捉えたか」「仮定とその根拠」「分解した要素」について、簡潔かつ論理的に伝えるよう意識しましょう。
そつなく取り組めているかの意欲
フェルミ推定では、課題に取り組む姿勢も評価の対象とされます。複雑な問題に対して意欲的に取り組む姿勢は、高く評価されるでしょう。
また、解答について説明する過程で、試験官から思わぬ指摘を受けることもあります。その場合は指摘を速やかに受け入れ、誤りがあれば修正しましょう。試験官は解答の正誤ではなく、受験者の思考の速さや対応の柔軟性を見ています。
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「REALME」のフィードバックは、自分の強みや弱みを客観的に分析でき、フェルミ推定の対策をする際の指針となるでしょう。
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自身に足りない部分を把握することによって、フェルミ推定を含む面接試験への対策が立てられるでしょう。
フェルミ推定を習得して高難度な企業の内定を得よう
フェルミ推定は、情報が不足した状況下で、仮定に基づき大まかな推計値を算出する思考方法です。採用面接で出題されるだけでなく、入社後の業務にも活かせて、即戦力として活躍することにもつながります。
一朝一夕では身につかないようにも思えますが、繰り返し例題に取り組むことによって習得が可能です。評価されるポイントを押さえ、対策しましょう。
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監修者:樋口尚弥(ひぐちなおや)