内々定はとりあえず承諾しても大丈夫です。内々定の承諾に法的な拘束力はなく、承諾したあとで辞退することもできるためです。ただし、辞退を決めたら早く、自分の言葉で伝えるという誠実な対応が条件になります。
とはいえ、「一度承諾したのに辞退していいのか」「第一志望の結果を待ちたいのに期限が迫っている」と迷っている人も多いでしょう。
この記事では、内々定をとりあえず承諾してよい理由とリスク、承諾すべきか迷ったときの判断フロー、保留と辞退の伝え方(例文つき)まで解説します。
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【結論】内々定はとりあえず承諾しても大丈夫
内々定はとりあえず承諾しても問題ありません。内々定の承諾に法的な拘束力はなく、承諾したあとで辞退することも可能だからです。企業側も、学生が複数社を併願していることを前提に採用活動をしています。
承諾しておくことには、次のメリットがあります。
- 1社決まっている安心感が生まれ、他社の選考に落ち着いて臨める
- 就活を続ける土台ができ、焦りから判断を誤りにくくなる
- 内々定の段階で断って、結果的に持ち駒をゼロにする事態を避けられる
一方で、マナーとして守りたいことは2つです。
- 辞退を決めたらすぐ連絡する(企業は次の候補者への対応を進める必要がある)
- 連絡を放置せず、自分の言葉で伝える(無断で音信不通にしない)
「とりあえず承諾」が問題になるのは、承諾したまま連絡を絶ったり、辞退の連絡を入社直前まで引き延ばしたりした場合です。承諾すること自体が悪いわけではありません。
期間の定めのない雇用契約では、労働者はいつでも解約の申入れができ、申入れの日から2週間を経過することで雇用が終了します(民法第627条第1項)。内定は入社日を始期とする労働契約と解されているため、内定承諾後であっても学生側からの辞退は可能です。内々定については、裁判例上そもそも労働契約が成立していないと判断されています(コーセーアールイー(第2)事件・福岡高裁 平成23年3月10日判決、労働判例1020号82頁)。出典=労働政策研究・研修機構『日本労働研究雑誌』No.616(2011年11月)・2026年9月19日確認。
内々定と内定の違い【法的拘束力はある?】
内定と内々定の違いは、労働契約が成立しているかどうかです。内定は企業と学生のあいだで労働契約が成立した状態、内々定はその契約が成立する前の段階にあたります。
内々定とは、企業側からの採用予定通知のことです。一般的に学生は複数社に応募するため、企業は早めに内定を出さないと優秀な人材が他社に流れると考えます。しかし、内定を出せる時期は10月1日以降です。そこで、10月1日以前に内々定を出して人材を確保する狙いがあります。
内定と内々定の違いは、法的拘束力の有無です。内定は、双方が採用の合意をするため、法的拘束力が生じます。しかし、内々定は企業側が一方的に採用の意思を示した状態のため、法的拘束力はありません。
また、内々定は新卒の採用時のみ使われます。転職は、内定を出せる時期に決まりがないため、内々定を出す必要がありません。
内定と内々定の違いを把握していないと、認識の違いからトラブルに発展するリスクがあります。就活前に、内定と内々定の違いを理解しましょう。
法的な整理をもう少し詳しく見ておきましょう。内定は、企業の採用通知と学生の承諾によって「入社日を始期とする労働契約」が成立したものとして扱われます。そのため、企業が正当な理由なく内定を取り消すことは認められにくくなります。
一方、内々定は労働契約が成立する前の段階です。「10月1日に内定を出す予定です」という企業側の通知にとどまるため、法的な拘束力は生じません。学生側から辞退することも、企業側が取り消すことも、内定より起こりやすい状態だと理解しておきましょう。
採用内定については、最高裁が大日本印刷事件(最高裁第二小法廷 昭和54年7月20日判決、民集33巻5号582頁)で、採用内定通知と誓約書の提出により「就労の始期を大学卒業直後とし、それまでの間、採用内定取消事由に基づく解約権を留保した労働契約」が成立すると判断しています。一方、内々定の段階ではこの労働契約は成立していないというのが裁判例の立場です(コーセーアールイー(第2)事件・福岡高裁 平成23年3月10日判決、労働判例1020号82頁)。出典=労働政策研究・研修機構『日本労働研究雑誌』No.616(2011年11月)、日本労働組合総連合会(連合)労働相談Q&A「採用内定取消・延期」・2026年9月19日確認。
内々定をとりあえず承諾する理由
応募者は、内々定をとりあえず承諾するケースがあります。その理由はさまざまで、主な理由としては以下の通りです。
・選考途中で返答を求められた
・内定先に不安がある
・早く就活を終わらせたい
・周囲の状況を見て焦っている
それぞれの理由について詳しく解説します。
選考途中で返答を求められた
第一志望の選考結果が出る前に、第二志望以降の企業から内々定への返答を求められることで、とりあえず承諾します。
新卒の就活では、第一志望の企業の選考と並行して、複数社の選考にエントリーする人がほとんどです。第一志望の結果が分からない状態だと、とりあえず承諾するケースがあります。
この場合、内々定を承諾していても第一志望の企業から内定をもらえたら、内々定を承諾した企業の内定を断ることが一般的です。
内定先に不安がある
内定先に不安を感じていると、別の企業からの内々定を承諾するケースがあります。
内定をもらえたものの、何かしらの不安や懸念点が解消できていない時に、他の企業から内々定が出るととりあえず承諾するケースは少なくありません。内定先と内々定先を比較して、どちらにするか悩んでいる状態です。
内定先の不安が解消されれば、内定先を選ぶ可能性があります。しかし、不安が解消できない場合、内々定がもらえた企業を選ぶケースも少なくありません。
早く就活を終わらせたい
就活は、長引くほど体力的にも精神的にも疲弊します。なかなか内定がもらえず、就活に焦りや不安があり、早く就活を終わらせたいと考えていることで、内々定をとりあえず承諾するケースがあります。これは、1つでも内定が出ていると安心という考えがあるためです。
就活は、長引くと「社会に自分の居場所はない」「自分はダメな人間だ」とネガティブ考えます。そのような状況だと、優先順位の低い企業の内々定でも採用通知をもらえることに喜びを感じて内々定を承諾します。
周囲の状況を見て焦っている
周りが就活を終えていたり、内定を持っていたりすると焦ります。そこで、とりあえず内定を受けて、もう少し考えてから最終判断をしようと考えているケースも珍しくありません。
就活は、時間が経過すると周りが内定をもらえたり、就職先が決まったりします。「周りは内定をもらえているのに、自分は一個も内定をもらえていない」と焦る人は少なくありません。そのようななか、内々定をもらえるととりあえず承諾する人が多い傾向にあります。
内々定をとりあえずで承諾するリスク
内々定をとりあえず承諾する際は、以下のリスクがあることについて理解が大切です。
・内々定は取り消されることがある
・スムーズに辞退できないことがある
それぞれのリスクについて詳しく解説します。
内々定は取り消されることがある
内々定には法的な拘束力がありません。なぜなら、内々定はあくまでも内定を出すことについて通知した段階であり、内定には至っていないためです。
内定であれば、企業側から一方的に取り消しをすることはほぼありません。しかし、内々定には法的な拘束力がないため、企業側からの一方的な取り消しは認められます。
明確な損害が認められる場合は、不当な取り消しとして認められることもあるものの、稀なケースです。
スムーズに辞退できないことがある
内々定を承諾するとスムーズに辞退できないことがある点にも注意しましょう。
内々定には法的拘束力がないため、一般的には辞退を受け入れてもらえます。しかし、オワハラや内定承諾書で拘束しようとする企業もあります。内々定の段階であっても、慎重に判断しましょう。
なお、もし内定承諾書にサインしていても辞退は可能です。
承諾すべきか迷ったときの判断フローチャート
承諾すべきか迷ったときは、「第一志望かどうか」「回答期限はいつか」「保留の交渉ができるか」の順に確認すると判断できます。気持ちではなく順番で決めると、あとから後悔しにくくなります。
次の4ステップで進めてください。
- その企業は第一志望か → はい:承諾する/いいえ:次へ
- 回答期限は他社の結果より後か → はい:他社の結果を見てから判断する/いいえ:次へ
- 回答期限を延ばす相談はできるか → はい:期限の延長を相談する(保留)/いいえ:次へ
- 他社に落ちた場合、この企業に入社してもよいか → はい:とりあえず承諾する/いいえ:辞退する
判断に迷う場合は、次のチェックリストも確認してみてください。
| 確認すること | 「いいえ」だった場合の考え方 |
| 仕事内容に納得できているか | 入社後のミスマッチが起きやすい。保留して情報を集める |
| 勤務地や働き方の条件を受け入れられるか | 条件面は入社後に変えにくい。承諾する前に確認する |
| 面接で会った社員の雰囲気に違和感がなかったか | 違和感の正体を言葉にしてから判断する |
| 他社の結果が出るまで待てる期限か | 保留を相談する。相談できないなら次の項目で決める |
| 他社に落ちた場合、この企業に入社してもよいか | 承諾せず辞退する。キープする意味がない |
「いいえ」が3つ以上ある場合は、とりあえず承諾するよりも、保留を相談するか辞退するほうが後悔しにくくなります。
内々定を辞退するときの対応
内々定は辞退することも可能です。辞退の意志が決まったら、早めに連絡をしましょう。
ここでは、内々定を辞退する際の期限やメール例文をご紹介します。
内々定辞退はいつまでにするのがよい?
内定は10月1日以降に出せるため、内々定辞退の最終期限は9月30日と考えることが一般的です。内々定の辞退は内定が出る前に行い、遅くても9月30日までに伝えましょう。
しかし、他の企業に行く決心をした場合は、その時点で辞退の連絡を入れることがマナーです。企業側は他の候補者に内定を出す準備や、再度採用活動を行うなどの対応をしなければならないため、決心した段階で内々定辞退の旨を連絡しましょう。
内々定辞退のメール例文
件名:内々定辞退のご連絡
○○株式会社 人事部人事課
採用担当 ○○様
お世話になっております。
○○大学○○学部〇〇(名前)です。
この度は内々定のご連絡をいただきまして、誠にありがとうございました。誠に勝手ながらこの度の内々定を辞退させていただくことにいたしました。
○○様をはじめ、採用ご担当の皆様には大変お世話になったにも関わらず、このような結果となり大変申し訳ございません。
自分の適性を改めて鑑みた結果、別の会社とご縁を感じ、辞退を決意した次第です。
○○様には、選考中温かいお言葉をかけていただき、最後まで就活を頑張れました。
本当にありがとうございます。
末筆ながら、貴社の益々のご発展をお祈り申し上げます。
―――――――――――――――
〇〇 〇〇(名前)
○○大学○○学部○○学科○年
携帯電話:080-○○○○-○○○○
メール:○○○○○○@○○○○○○.ab.jp
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内々定辞退のメール例文(一旦承諾した場合)と電話の伝え方
件名:内々定辞退のご連絡
一度承諾したにも関わらず、勝手ながら内々定は辞退させていただくことにいたしました。
誠に申し訳ございません。
本来ならば直接お伝えするところではありますが、メールでのご連絡をご了承いただきけますと幸いです。
末筆ながら、貴社のますますのご発展をお祈り申し上げます。
最後になりましたが、この度は誠にありがとうございました。
―――――――――――――――
〇〇 〇〇(名前)
○○大学○○学部○○学科○年
携帯電話:080-○○○○-○○○○
メール:○○○○○○@○○○○○○.ab.jp
―――――――――――――――
一度承諾した内々定を辞退する場合は、メールを送る前に電話で伝えるほうが誠実です。電話は「お詫び → 理由 → 感謝」の順で、3分以内を目安に話しましょう。
- お詫び:「一度承諾させていただいたにもかかわらず、大変申し訳ございません」と先に謝る
- 理由:「他社とのご縁を感じ」程度で十分。具体的な社名や比較の内容まで伝える必要はない
- 感謝:選考で時間を割いてもらったことへのお礼を最後に伝える
電話がつながらない場合は、留守番電話に用件と名前を残し、あらためて同じ内容をメールでも送ります。担当者に連絡がつかないまま放置するのが、いちばん印象を損ねます。
内々定保留という選択肢
内々定の承諾を迷っている場合は、保留して考える時間をもらう選択肢もあります。ここでは、内々定保留について詳しく解説しながら、メールの例文をご紹介します。
内々定は保留できる
もうすぐ結果が出る企業と迷っている場合は、保留という選択肢もあります。
志望度の高い企業が他にある場合、その企業に受かったら辞退、不採用だったら承諾したいと考えるケースもあるでしょう。この場合は、結論を出す日付の提示に留め、回答は保留できないか相談しましょう。
保留を希望する場合は回答期限を明確に提示し、期限内に返事を伝えましょう。
内々定を保留を伝えるメール例文
件名:内々定保留のご相談
○○株式会社 人事部人事課
採用担当 ○○様
お世話になっております。
○○大学○○学部〇〇(名前)です。
この度は内々定のご連絡をいただきまして、誠にありがとうございました。
貴社より評価いただいたことを大変うれしく思っております。
すぐにでもお返事をさせていただきたいものの、現在選考途中の企業があり、結果が◯日に通知される予定です。
大変恐縮ではありますが、悔いのない決断をしたいと考えているため、◯日までお返事をお待ちいただくことは可能でしょうか。
ご検討のほど、何卒よろしくお願いいたします。
―――――――――――――――
〇〇 〇〇(名前)
○○大学○○学部○○学科○年
携帯電話:080-○○○○-○○○○
メール:○○○○○○@○○○○○○.ab.jp
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ここまでの対策を進めたら、次はこちらの記事もチェックしてみてください。
承諾を急かされたら?オワハラへの対処法
承諾を急かされたときは、その場で返事をせず「◯日までにお返事します」と期限を示して持ち帰りましょう。就活生に他社の選考辞退を強要したり、即日の承諾を迫ったりする行為はオワハラと呼ばれ、応じる義務はありません。
よくあるのは、次のようなケースです。
- 「この場で承諾しないと内々定は取り消す」と即日の返事を迫られる
- 「他社の選考はすべて辞退してください」と求められる
- 承諾するまで面談や電話が繰り返し設定される
- 内定承諾書へのサインを、内容を確認する時間もなく急かされる
角を立てずに断るには、感謝を先に伝えてから期限を提示します。次の言い方はそのまま使えます。
| 回答を待ってもらいたいとき 「ありがたいお話をいただき、大変光栄に思っております。ただ、悔いのない決断をしたいと考えておりますので、◯月◯日までお時間をいただけますでしょうか。」 |
| 他社の選考辞退を求められたとき 「他社の選考につきましては、自分自身で納得したうえで決めたいと考えております。◯月◯日までに必ずお返事いたしますので、それまでお待ちいただけますと幸いです。」 |
それでも強く迫られる場合は、一人で抱えずに大学のキャリアセンターへ相談しましょう。学生と企業のあいだに入って対応してくれることがあります。強要に応じて他社の選考を辞退しても、その企業への入社が保証されるわけではありません。
内々定の承諾に関するよくある質問
内々定の承諾について、就活生から特に多い質問に回答します。
承諾後に辞退したら損害賠償を請求される?
内々定や内定を承諾したあとに辞退しても、損害賠償を請求されることは基本的にありません。働く先を選ぶ自由は学生の側にあります。裁判例では、内定辞退の申入れが「著しく信義則上の義務に違反する態様で行われた場合に限り」損害賠償責任が生じるとされ、入社直前に辞退を申し入れた学生に対する会社側の損害賠償請求(採用費用118万円)が認められなかった例があります(X社事件・東京地裁 平成24年12月28日判決、労経速2175号3頁。弁護士法人リバーシティ法律事務所「内定辞退と損害賠償」・2026年9月19日確認)。ただし、入社直前の辞退や、連絡を絶ったままにする対応はトラブルのもとです。辞退を決めたら、できるだけ早く自分の言葉で伝えましょう。
複数の内々定をキープするのはあり?
複数の内々定をキープすること自体は問題ありません。内々定に法的な拘束力はなく、企業側も学生が複数社を併願していることを前提にしているためです。ただし、入社できるのは1社だけです。行かないと決めた企業には早めに辞退を伝え、キープしたまま放置しないようにしましょう。
いつまでに承諾の返事をすべき?
内々定の承諾は、企業から示された回答期限までに返事をするのが原則です。期限が示されていない場合は、1週間以内を目安に連絡すると失礼になりません。他社の結果を待ちたいときは、期限を過ぎてから連絡するのではなく、期限より前に「◯日までお待ちいただけますでしょうか」と相談しましょう。
内々定は焦らず判断して就活を乗り切ろう!
内々定はとりあえず承諾しても大丈夫です。承諾に法的な拘束力はなく、辞退もできます。ただし、辞退を決めたら早く、自分の言葉で伝えることが条件です。
一方で、内々定には取り消しや入社後のミスマッチにつながるリスクもあります。迷ったときは「第一志望か → 回答期限はいつか → 保留の交渉はできるか」の順に確認しましょう。
保留も辞退も、期限を示して誠実に伝えれば角は立ちません。承諾を急かされても、その場で返事をする必要はありません。
承諾したあとも就活を続ける人は、次の選択肢を用意しておくと落ち着いて判断できます。

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監修者:久保駿貴(くぼしゅんき)